知っておくと便利な電子回路集

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知っておくと便利なちょっとした回路を色々紹介します。
部品点数がそんなに多くなく、ICも専用のものはできるだけ使わないようなやつばかりです。
理論的な解説はほとんどしませんので、回路定数をちゃんと決めたいときは参考URLを貼っておきますので見てもらったほうがいいと思います。

私も時々使うので、備忘録として残しておきます。
よさげな回路があれば随時追加していく予定です。

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電源系

逆接続保護(ダイオード)

逆接続保護(ダイオード使用)
逆接続保護回路は非常に重要です。
逆接続というのは、直流の電源のプラスマイナスを逆に接続してしまうことです。
そんなことしない!と思うかもしれませんが、どんなに注意を払っていてもうっかりが起きてしまうことがあるのです...
特に自作ではその真価を発揮します。
DCジャックやUSBコネクタといった極性をどうやっても間違わないコネクタを使う場合は不要ですけどね。

ダイオードには順方向電圧があるのでその分出力側の電圧が落ちてしまいます。
例えば、入力が電源が5Vで内部回路も5Vを使いたい場合にはダイオードの電圧降下があるので少し厳しいです。
少しでも電圧降下を減らすにはショットキーバリアダイオードを使うといいでしょう。
内部の電源をレギュレータやDC/DCコンバータで電圧を落としたりする場合には有用です。

もう1つの方法として、ダイオードではなくブリッジダイオードを置くのもありです。
極性を間違っても動かないといったトラブルも発生せず、問題なく使えるようになります。
デメリットとしてはダイオード2つ分の電圧降下が発生することです。

逆接続保護(P-ch MOSFET)

逆接続保護(Pch MOSFET使用)
逆接続保護にダイオードを使うと損失が...という問題を解決するのが P-ch MOSFET を使った逆接続保護回路です。
こちらの回路の場合の電圧降下はMOSFETのON抵抗分だけですので、電圧降下を非常に低く抑えられます。
注意点としては P-ch MOSFET の通常使う接続とは少し違うところです(ドレイン側に負荷につなげることが多い)

ツェナーダイオードは入力電圧がFETのゲート・ソース間電圧(Vgs)を超えないようにするために必要です。
「このシステムでは絶対に超えない」と断言できるのであれば不要です。
Vgsの定格が20Vであればその半分の10Vくらいを使えばいいのではないでしょうか。
厳密にはFETのデータシートをしっかりと見て、特性を調べてツェナーダイオードを選定する必要があります。

この回路は逆流します。
ダイオードは逆流しません(厳密には漏れ電流がある)が、こちらは逆流します。
負荷に大容量のコンデンサなどがある場合はVINを遮断すると負荷側から流れてしまいます。
これを防ぐには後述の逆流防止回路を使う必要があります。

直流の突入電流抑制(ロードスイッチ)

ロードスイッチ
負荷に大容量のコンデンサがあって、突入電流で電源側が落ちてしまうといった問題を解決できます。
電圧をゆっくり上げて電源投入時の突入電流を抑えます。

電圧をゆっくり上げる時間は上図のコンデンサC01で決めます。
抵抗R01とR02の分圧でVgs電圧が決定するので絶対最大定格を超えないようにする必要があります。
逆にVgsの電圧が低すぎると P-ch MOSFET がONしなくなるのでバランスが大事です。
VINの幅が広い場合はゲート・ソース間にツェナーを入れてしまうのもありです。

いわゆるロードスイッチという回路ですので回路下部にある N-ch MOSFET で負荷のON/OFFが可能になっています。

ON/OFFが不要な場合

突入電流抑制のみの回路
突入電流を抑制したいだけで負荷のON/OFFが必要ない場合は N-ch MOSFET を取っ払えばOKです。

逆流防止(バック・トゥ・バック)

ロードスイッチはそのままでは逆流してしまいます。
負荷に大容量のコンデンサがある場合はこの問題が発生します。
負荷側のほうの電圧が高くなってしまった場合はVIN側に流れてしまいます。
その場合はMOSFETをもう1つ直列に逆向きで接続します。
ロードスイッチ+逆流防止
ボディダイオードが逆向きになるようにFETを直列に2つ接続することはバック・トゥ・バック(Back to Back)接続と呼ばれています。

逆流防止(理想ダイオード)

逆流防止だけのためにFETを2つ使うのは実装面積が...という場合にはFET1個で実現できる回路もあります。
理想ダイオード回路
回路は結構テクニカルですが、部品点数は少なくなります。
ダイオードを1つ使ったものと比べると電圧降下も非常に低いですからメリットは十分にあります。

動作原理は...調べたら出てきます(笑)

通信系

I2Cレベル変換

基板内の通信でよく使うI2Cですが、マイコンが3.3Vでセンサが5Vというように電圧レベルが違う場合は多々あります。
センサ部分も一から設計するのであれば極力合わせますが、モジュール等の場合はそれもできないこともあります。
そこでI2Cの電圧レベルの変換が必要になってくるわけです。
I2Cレベル変換回路
N-ch MOSFETが1つとプルアップ用の抵抗が2つだけです。
MOSFETは2N7002などの小さいもので構いません。

I2Cであれば通信線は2本ですからこの回路を2つ用意します。
FETの向きも重要ですので高電圧側がドレインにつながるようにします。
また、この回路はI2Cのようなオープンドレインの通信バスにしか適用できません。
SPIやUARTみたいな通信では使えません。

この回路が4chほど組まれたモジュールはAmazonやAliexpressでも安く売られていますね。
Amazonだと1個ではなく10個入とかで売ってます。

RS485用自動方向制御

RS485は半二重通信ですから、送信時に送信イネーブルの信号が必要です。
その信号の端子をマイコンなどで消費するのはもったいないと感じませんか?
できれば普通のUARTみたいに通信線の2本だけで実現したいと思ってしまいます。
そこで自動方向制御回路を実装すれば、制御プログラムが不要ですし、ピンが1本空くメリットもあります。

RS485自動方向制御
通信前はTXDは"HIGH"ですが、通信が開始されるとTXDは"LOW"に変化します。
このときNOTゲートの入力はダイオードを介してコンデンサも放電されるので、すぐに"LOW"になります。
つまりNOTゲートの出力、方向制御ピン(DE/RE)は通信開始時に"HIGH"になります。

通信中はTXDは"HIGH"と"LOW"にバタバタと変化しますが、NOTゲートの入力部の電圧は抵抗とコンデンサによってゆっくりと充電されます。
その充電電圧がNOTゲートのしきい値電圧に達するまではDE/REは"HIGH"のまま保持されるので自動で方向制御ができるわけです。

この"HIGH"を保持する時間は抵抗とコンデンサによって決まりますし、通信速度も影響します。
上図の抵抗値と静電容量で問題が出たことはありませんが、状況によっては変更が必要でしょう。

注意点

RS485はデバイスによっては癖があるようで、自動制御をすると動かないものもあります。
そういう場合は自動方向制御を使わず大人しく普通に制御をしたほうがいいでしょう。

Arduino Pro Mini などの自動リセット

Arduino Pro Mini はUSBシリアル変換器と接続して書き込みを行いますが、その際にリセット動作が必要です。
リセットボタンを押すのも毎回面倒なので自動でリセットをしてくれるを実装しましょう。
既製品のモジュールにはもちろん自動リセット回路がついてますので、通常は心配ないのですが自作する際には重要なポイントです。
DTRリセット回路

リセットピンは10kΩの抵抗でプルアップされています。
スイッチは手動リセットの際に使うものなので、今回は無視してください。

自動リセット回路はDTR端子とRESET端子の間にあるコンデンサがその役割を果たしています。
DTRの信号をパルス化するための微分回路になっています。
超シンプルな構成にするのであればコンデンサだけでも一応動きます。
ダイオードはパルス化した際のスパイクノイズをVCC側に逃してあげるためのものです。(後述のダイオードクランプ回路)
Arduino Pro Mini に実装されているマイコンであるATmega328PのRESETピンは実は高電圧13Vまでは耐えられるのですが、その電圧を超えると壊れるので念のためダイオードが必要です。

ESP32などの自動リセット

ESP32やESP8266でプログラムを書き込むときに必要な回路です。
ESP系はプログラムを書き込む際にIO0ピンを"LOW"にした状態でENピンを"LOW"に変化させることで書き込みモードに移行させる動作が必要があります。
この動作をスイッチを設置してカチカチするのも面倒ですから自動でできるようにする回路です。
ESP32自動リセット回路
ロジックICで実装するのもありといえばありですが、これだとNPNトランジスタと抵抗それぞれ2個だけなのでシンプルですよね。

DTRとRTSのピンが出ているUSB-UART変換ICを使う必要があるのが注意点です。
ベース抵抗だけが内蔵されている2chのデジタルトランジスタを使うとスマートに仕上がります。

USB Type-C コネクタから5Vを引き出す

USBのType-Cのコネクタは普通にUSBケーブルを接続しただけではVBUSに電力が供給されない仕様となっています。
市販のUSBケーブルで問題なく5Vが給電できている場合は片方がType-Aだったりしませんか。
もしくはケーブルの中に回路が入っていたり...
そういう仕様なので仕方ないですが、5Vを引き出すには5.1kΩが2つ必要です。

USB Type-C 5V引き出し回路
CCという端子が2つありますのでその端子とGND間に必要です。
これでVBUS端子から5Vが供給されます。

アナログ・I/O周辺

チャタリング除去

スイッチを取り付けた際にトラブルのもとになるのがチャタリングという現象です。
スイッチの切り替えの際に、接点に機械的な振動が起きて、何回もON/OFFを繰り返してしまいます。
マイコンに入力する場合はソフトウェアで解決してもいいですが、ハードウェア的に解決する方法もあります。

チャタリング除去回路
R01はプルアップ用、R02とコンデンサで充放電の時定数を決定します。
R02はコンデンサの放電時の電流制限も担っており、R03も同様にNOTゲートへの電流を制限する抵抗です。

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R02とR03の抵抗値が小さいと、スイッチ押した際にコンデンサに溜まった電荷が一気に放電されるのでスイッチやICを壊してしまいます。
今の電子部品はタフなのですぐに壊れることはないかもしれませんが、寿命が短くなってしまうかもしれません。

誘導性負荷のサージ保護

リレーや直流モーターなどの誘導性負荷を駆動する場合は、駆動回路がOFFのときに発生する逆起電力が厄介です。
逆起電力は印加電圧の10倍以上になることあるので、保護しなければ駆動回路にダメージを与えてしまいます。
様々な保護手法がありますが、ここでは直流回路に絞って選定が簡単な2つだけ紹介します。

フリーホイールダイオード

フリーホイールダイオード
私は最初にこれを知りました。
フリーホイールダイオードと呼ばれるやつです。
なぜかフライホイールダイオードと言う人もいます。

ドレイン電圧はダイオードでクランプされるため、Vcc+Vfまでしか上昇しません。
ダイオードは逆耐圧をVccの10倍以上、順方向電流を負荷電流以上で選定します。(オムロン曰く)
逆耐圧が10倍以上ってのが結構大変かもしれません、12Vだと120V以上ってことですからね。
また、電源や負荷が決まっている場合はいいのですが、オープンドレインとして使う場合はこの方法を使えません。

ツェナーダイオード

フリーホイールダイオードのデメリットを克服するのがツェナーダイオードを使う方法です。
サージ保護(ツェナーダイオード)
電源に接続せず、駆動部分に並列に接続しますので自由度が高いです。
ツェナー電圧は駆動部の定格電圧を超えないようにします。
例えばスイッチング用のFETのVdsの定格が30Vであればツェナー電圧は20Vくらいにするという感じです。

ダイオードクランプ(I/O等の過電圧・サージ保護)

外部からの入力を受けたり、ノイズを受けやすい環境であれば過電圧やサージから保護する必要があります。
その保護方法の1つがダイオードクランプです。

ダイオードクランプ
"INPUT"から入力された電圧は-Vf~Vcc+Vfの電圧にクランプされ"IC-IN"には過大な電圧がかからなくなります。
Vfは小さい方が入力端子に印加される電圧が小さくなるので、ショットキーバリアダイオードなどのVfが小さいダイオードがよく使われます。
Vfが大きいものだと、例えばVccが5VでVfが1Vだと6Vがかかることになるので、絶対最大定格が5.5Vであればオーバーですよね。
負電圧がかからない想定であれば"IC-IN"とGND間のダイオードは不要です。

入力抵抗はここでは1kΩですが、過電圧がかかったときにダイオード介してVccやGNDに流れる電流の制限抵抗ですので、なるべく大きいほうがいいです。
大きい方がいいんですが、大きすぎるとダイオードの接合容量などとの組み合わせでローパスフィルタとしても機能してしまうのでほどほどという感じですね...
これはVccの電圧や信号の周波数などにもよって変わってきますので、ちゃんと選定したほうがいいでしょう。

正クランプ(交流信号の押し上げ)

波形の底部を0Vに固定するシンプルな回路です。
交流信号をADCに入力したいときなどに使えます。
0Vに固定と言いつつダイオードのVf分は下に下がります。

DTRリセット回路
簡易的ですので低電圧だとダイオードの順方向電圧の影響が無視できませんがそれなりに使えます。
普通はオペアンプかなんかでオフセットしたほうがいいとは思います。

絶縁デジタル入力(シンク入力)

工場のようなノイズまみれの環境でも安心して使える、絶縁されたデジタル入力回路です。
某メーカーのPLCを分解して入力部の基板を見てみたら下図の回路のまんまでしたので、信頼性は抜群です(?)
少し古いバージョンのPLCなので今だと変わっているかもしれないですが...
絶縁デジタル入力
この回路はシンク入力用ですから、INPUTは有接点かオープンコレクタ出力が繋がります。

電源がDC24Vなので完全に産業向けです。
フォトカプラの入力の電流制限抵抗は通常は4.3kΩで高速入力だと3.3kΩでした。
4.3kΩは手に入りにくいので3.3kΩくらいでいいと思います。
電源の電圧が高めなので抵抗の許容電力には注意が必要ですが、1/2Wくらいあれば大丈夫です。

入力に並列についている560Ωの抵抗はブリーダ抵抗といってノイズでフォトカプラが誤作動しないようにするものです。
ブリーダ抵抗にノイズの電流を逃してフォトカプラの動作するのを防ぎます。


シンプルで便利そうな回路を紹介してみました。
こういったのを回路ブロックに入れていると設計時に楽ができそうです。
ICを使ったもの、特にオペアンプ、を紹介してしまうとキリがなさそうなので紹介するにもなにか制限を設けたほうがいいかもしれないと思ってしまいました。
参考になれば幸いです。

知っておくと便利な電子回路集

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