家にはだいぶ前に作ったリフローオーブンがあり、それで今も基板実装をやっています。
特に問題はないのですが、設定がまったくできなかったり、オーブン自体が普通のものなのでもうかゆいところに手が届くものにしたいなと思っていました。
ずっと作り直したいなと思って数年経ってましたが、ようやくその気になったので作り直してみました。
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目次
以前作った現行のリフローオーブン
もう6年ほど前にリフローオーブンを作ったんですが、今でもバリバリの現役です。
といっても中身の基板は一度作り直したんですけどね。
コントロール部分が上に乗っかっているので自作感はありますね。
このオーブンに大きな問題があるとかではなく、もっといいものを作りたいというだけのこだわりです。
オーブンの選定
リフローをするために改造する今回のオーブンは、コンベクションオーブンという熱風を対流するファンがついたちょっといいオーブンです。
庫内の温度がムラが少なく均一になるので焦げにくく、食材の中までゆっくりと火を通しながら調理できるというのが製品の特徴です。
そのコンベクションオーブンを使えば基板も均一に熱することができるので高品質にリフローができるという算段です。
改造の犠牲になるのはシロカのノンフライオーブン ST-4N231 という型番のものにしました。
Amazonでは売ってなかったのですが、コンベクションオーブンの中ではそこそこリーズナブルです。
大型の基板や大量生産はしないので小型なものがいいですし、なんといっても改造しやすそうだったのが決定打になりました。
右側の操作部の板がフラットなので操作パネルが取り付けやすそうだと思ってしまいました...
値段は1万円くらいのものですが、ちょっとケチってヤフオクで未使用品を見つけて8千円で買いました。
白色のが方がいいかなと思っていたんですが、赤色の方が安かったです。
保証なんていらないんですよ、めちゃくちゃに改造してしまうんですから。
あとはアイリスオーヤマやツインバードのコンベクションオーブンも検討はしましたが、大きそうだったのでやめました。
普通にオーブンを買う際は、大は小を兼ねると思うんですけどね...
ベースにさせていただいたリフローオーブン
基板やプログラムを一から作ろうかと考えていたのですが、特にUI設計は大変です。
先人のいいものを探していたらESP32とNextionのHMIの組み合わせで作っている人がいてプログラムやUIも公開してくれていたので、それをベースに考えました。
ちなみに回路は全然違います。
HMIとESP32を使ったのが同じくらいです。
UIはほとんど同じですが、プログラムは参考程度です。
オーブンの加工
まずは手に入れたオーブンをフレームを取り外して、フロントパネルを加工します。
薄い板ですので、ドリルで穴を開けなくても金切りばさみで切断できます。
ちなみに温度調節用のボリュームやヒータの切り替えスイッチはつまみがしっかりくっついていてなかなか取れなかったので、めちゃくちゃに破壊してしまいました。
タイマー用のボリュームは外しても隠せるようなものが思い浮かばなかったのでそのままにしています。
チーンとなるやつですが、これは昔から変わらないですよね。
配線はメインとなるヒータやファン、それから温度ヒューズっぽいものは残して、それ以外は全部取り除きます。
ただし、取り外した電線や端子はオーブンの内部配線に適した耐熱性のあるものですから残しておきます、貴重です。
耐熱端子は普通に買うと結構値段です。
ニッケル製ですからね、普通の端子なら酸化してしまいます。
ヘビーに使うわけでもなく一時的に熱くなるだけなので、そこまで気にしなくても良いと思いますが...
千石電商だと1個ずつ売っています、それでも高いですけどね。
フロントパネルの設計
タッチパネルにはNextionのHMIを使います。
画面作成ソフトで作って、UARTで制御できるものです。
画面の描画が楽なので画面遷移が多く複雑であればこういうのを使うと便利です。
今回はエンハンスドシリーズの3.5インチの物を使いました。
図面は公式から提供されていますし、3Dモデルも有志の方が作っていたので、それらを使いながらFusion360でいそいそとパネルを作ります。
実物を測って微調整して設計は終わりです。
今回は厚さ1.2mmで設計しました。
タッチパネルに頻度の高いスイッチを設置すると、そこだけ使いすぎて摩耗しそうなので、スタートとストップ用のスイッチは別置きです。
抵抗膜方式あるあるだと思うんですよね...
これをミスミのmeviyに投げるとメッキ処理込みで作ってくれます。
今回の加工は3千円ちょっとでした。
ペラペラで細くても文句なく作ってくれるのでありがたいです。
今回は無電解ニッケルメッキです。
メッキを気軽にできるのは非常にありがたいですよね。
1週間くらいで完成して届きました。
タッチパネルがぴったり嵌りすぎて感動するくらいでした、まったく問題なしです。
実は体裁面を間違えて逆にしていましたが、そんなに気になりませんでした。
電気・制御部
以前作ったリフロー制御用の基板がありますので、それがベースです。
今回はなんとなくESP32-S3を使いたかったので、オーバースペックですが採用しました。
Wi-Fiも使わないので能力をかなり持て余しています。
プリント基板設計(KiCad)
基板サイズの成約として大きさはタッチパネルくらいのサイズです。
さすがに1枚には全機能が入らなかったので2段に分けました。
ようやく習得したKiCadを使って設計しました。
見た目は私が使っていたEAGLEの頃の設定に寄せています(笑)
フットプリントもインポートして使っているので、こだわりはそのままです。
中国の基板屋に発注して、実装したらこんな感じです。
2段重ねですが、下段はそんなに部品は載っていません。
制御としてはシンプルですからね。
耐熱性のあるコネクタとかを採用したかったのですが、ラインアップはないし高いしでやめました。
高温部には直接触れてはいないので、なんとか耐えられることを祈ります...
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ブザーは筐体に内蔵するので音量を上げる必要があると思い、圧電ブザー用のドライバを使っています。
DiodesのPAM8904というやつですが、日清紡マイクロデバイスでもピン互換のある同等のNJU72501というICが出ています。
秋月にもIC単体と、モジュール化したものが売っています。
SSR(ソリッドステートリレー)
オーブンのヒータを制御するSSRはON-OFF制御ではなく比例制御できるようにアナログ入力のSSRを買いました。
調べてみると位相制御をしてくれるSSRのようです。
入力形式は4-20mAや、0-10V、0-5Vといったのものがあります。
今回はラフに制御したかったので0-5Vにしました。
わざわざドライバICや電源などの回路を用意しなくていいですからね。
一旦、この状態で動作テストです。
きれいに配線する前に、ちゃんと動くのかを確認します。
適当に配線していて作業している感が出ます。
盤内配線
基板や制御に問題なさそうだったので、フロントパネルをはめ込んで配線します。
ヒータの電線には耐熱電線を使用します。
外径が細めのものが良かったのですが、見当たらずちょっと取り回しの悪いものになってしまいました。
また、電線の固定には耐熱の結束バンドを使用します。
流石にプラスチックは耐熱でないと溶けるおそれもあるので、耐熱性のあるものを使います。
あとは熱い部分に直接触れないようにポリイミドテープなどで固定します。
色々と工夫しながらも妥協をしつつ、配線したらこうなります。
ぐちゃぐちゃに見えますが結構頑張ったほうなんです。
熱電対は庫内に入れていますが、穴は開けず、ヒータの取付穴の隙間に無理やり通しています。
SSRの固定は耐熱性の両面テープです、許してください。
完成と使用感
見た目はいい感じになりました。
個人用のリフローオーブンとしては小型でそこそこいいものができたと思っています。
さて、実際の性能ですが、普通のオーブンを改造しただけあって理想的な加熱性能は出ません...
ネット上に転がっているいろんなプロファイルを見ながら設定しましたが、どうやっても加熱の上昇時間が遅いのでこれが限界という感じですね。
断熱性をもっと高めたほうがいいのかもしれません。
今だと加熱で2[℃/s]は難しそうで1[℃/s]は大丈夫そうです、限界は1.5[℃/s]くらいでしょうか。
最初の加熱制御はPIDのパラメータをもう少し変えるとうまくいきそうですね、改善しがいがありそうです。
プリヒートの定温制御のオーバーシュートをもうちょっと抑えられたらいいんですけどね。
現状の性能でいくとするならば、プロファイルの加熱勾配をもう少し緩めにする方がいいでしょうね。
冷却性能も低めです、そもそもそんなに求めてはいないですが。
対流ファンを回して扉を開けてこれですから、現状の装置ではこれ以上どうしようもないですが、ファンを追加したりもう少し改善はできそうです。
自分で作ったものの思ったよりが完成度が高くて驚いています、自画自賛できます。
このオーブンでは試作くらいでしかリフローをしていないですが、普通にリフローはできます。
これから何度も実際に使ってみて、自分が使いやすいようにどんどん変えていこうと思います。
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